調査では患者さん、患者会の方にもお世話になることがあるのですが、
久しぶりにまた近い領域の案件があったため、お世話になった方に改めて
何度かメールをお送りしても返信がなく、何かしでかしたかなと
恐る恐る会の方に電話をしたところ、亡くなられていたということを知りました。
そういった可能性は当然あるとはいえ、以前ご協力を頂いたのは、亡くなられる数か月前だった
という事実に、何とも言えないものがありました。
患者さんの中には、他の患者さんの役に立ちたいと思い行動している方が多くいらっしゃいます。
この薬が実際に使える頃には、自分はもう生きていないだろうけれど、自分の意見が
他の患者さんの役に立つなら協力しますよ
という言葉も何度聞いたかわかりません。
体験した人のみが抱える思いや願いを十分にくみ取れているとは思いませんが
今日から始まるインタビューにおいても、注意深く耳を傾けたいと思います。
いま、NPOのチャイルド・ケモ・ハウスさんが、夢の病院をつくろうPROJECTを始められています。
病気の子ども、中でも小児がん専門の夢の詰まった病院をみんなでつくろうというコンセプト。
その病院に必要なアイテムごとに寄付をし10億円集まれば創設するというモデルで、
必要なアイテム(備品や施設用具)は、寄付する側もアイデアを出すこともできます。
企画から参加できる寄付というのは、特徴的ですね。
さて、言わずと知れたキッザニア、開園以来満員御礼長蛇の列、子ども達に大人気です。
入り口まで連れ添う親や引率者(教師など)は、園の中ではガラスのゲージの外の傍観者でしかありません。
子どもは主役として学びと社会の接点に触れ、働かざる者食うべからずな社会の一面も垣間見ます。
キッザニアで体感した子どもにとって、そこで触れる社会は、日常の延長にあるものです。
「夢の病院」のアイテムとしては、きれいに拭けるタオル、待っていても飽きない待合室、パタパタと
音のしないナースシューズ、うるさくない空気清浄機、家のような病院、家や学校とずっとつながっている
テレビ電話、、、などが候補に挙がっています。程度の差はありますがどれも“あったらいいな”です。
小児がんの子どもの入院日数は平均して長いこともありますし、病院という空間を日常に近づけるべく
ホスピタリティ面でストレス軽減を図ろうというのもわかります。
子どもにとって良いことというのは、保護者が決める場面が多く、このプロジェクトも親世代が
子どもにしてあげたいことという視点で寄付をするのでしょう。子どもに不憫な思いをさせたくないという
親心が先行していたとしても、子ども自身にとっても喜ばれるホスピタリティが、あるのだと思います。
最近は寄付や社会貢献もモノを与えるのではなく、モノの作り方を教えるアプローチが多く見られます。
子どもの防犯ということで、護身の体験講座を開催する取り組みをされている方もいらっしゃいます。
病気と向き合う患児のために、必要だと思うことは人それぞれの視点があると思います。
クリニクラウンのように人が病院にやってきて遊びとユーモアを創る、パソコン等を院内に導入し、
ゲーム性ある学びができるようにし学力の遅れを感じさせないようにし、病気と向き合うモチベーションを
高めるようにするなども一つでしょう。箱ありきでなくてもできること、です。
また、小児がんの子どもの治療のために、地方から東京に一時的に移り住まれる方もいらっしゃる中で、
施設という視点であれば、一つの施設に集中させないで、また新しく作るというだけでなく
コアな機能を既存の病院にもアドオンでき地方でも横展開できるやり方もあるかもしれないですね。
がんと向き合ってきた先輩患者さんが、がん患者さんの相談に応える、ピアカウンセリングが
各地でおこなわれていますが、ご存知でしょうか?
東京都内では、2箇所の院内(都立駒込病院と武蔵野赤十字病院)に、それぞれ週2日窓口を設け、
NPOがん患者団体支援機構より派遣されたがん経験者のカウンセラーが、病気と向き合う上での
心配や不安を聞いたりアドバイスをするなど、院側の「がん相談支援センター」と連携した形で、
がん体験者が自らの体験を生かした無料相談(1回30分が目安)を行っています。
都内は2008年度で369件の相談(男女比1:2)対応実績とのことですが、他地域においても
茨城県内日立病院など2カ所の病院内で、2012年度からは滋賀県内7地域に計14人の
独自カウンセラーの配置、千葉県内13カ所の拠点病院などにも設置予定のようです。
先輩患者をカウンセラーとする場合、
・カウンセラーリクルート・・資質ある協力的な人の囲い込み
・カウンセリング技術・・体験起点の属人的カウンセリング技術の体系化
・継続性・・カウンセラーへのインセンティブ、カウンセラーの健康維持予防(院内感染など)
などメンテナンス面でのコストを維持するために、自治体や厚労省などとの助成協働としての
着手があるのでしょうが、設置側の病院にとっても喜ばしい長期継続できるモデルになっているのか、
恒久性はあまり追求されていないのか、やがてはカウンセル料を徴収するたてつけなのか、どうなのでしょう。
茨城県の場合、NPO法人のつくばピンクリボンの会が2箇所に計週2日カウンセラーを派遣するのに
年間70万円の予算でやりくりされているということですから、まさにボランタリーといった感じでしょうか。
こういった取り組みにおいてはまず、体験者の語りの価値化(説明)が必要ですね。
日経には、カウンセリングの技術を持つ様々ながんの経験者を集めるのは「人口が多い都内でさえ難しい」
(東京都福祉保健局)という記事文が掲載されていた(09/07/26)のですが、私自身定性調査の
協力者リクルートをする場合、東京での協力者出現率は特に低いように思います。
疾患のドキュメンタリー番組に登場される患者さん、家族の方も地方在住者が多いのでは?
このことにはまた改めて触れたいと思います。
病気になると、どこか後ろ向きになってしまうこともあるかもしれません。
しかし、病気になるということは健やかさや時間、金銭や時に希望や人生設計、人間関係などを、“失う”ことだけではありません。
病気になってから、何をしたいか?という話を患者さんにお聞きすると、“社会復帰したい”という声を多く伺います。
社会復帰そのものが、自身の存在意義を確認でき、またインに入りがちな状況から脱却し社会と繋がっている
意識を持つことができ、病気と向き合うモチベーションの向上にも繋がるからでしょうか。
最近は、社会復帰支援として、初期罹患者さんへの就労支援、就労継続支援なども各所でおこなわれています。
アートワークをして作品を販売し、売上の一部を本人に還元する活動は各地NPOなどでもおこなわれていますが、
もう少し、お仕事として社会復帰支援をするという活動も進んでいます。
若年認知症社会参加支援センター「ジョイント」もその一つで、彩星の会、干場さんは
農業や工場での作業などを希望する方と受入先とのマッチング、導入の支援に関わっています。
病気になると、“患者としての生き方”を演じてしまっている、演じさせられてしまう場面もあるように思います。
なるべく今までの自分を生かし、継続して存在し続けるための支援が、現在病気と向き合う方への
新たなケアの形になっていくことが期待されます。