「代替医療のトリック」
~サイモン シン、エルツァー エルンスト
最近読んだ本の中から、少し感じたことを。
この書での主訴は
代替医療の効果は認めるに足らないものが多い、もしくはあってもプラセボ効果と変わらない、なぜなら
・科学的に効果が実証されていること
を満たしていないからである。
効果を検証するには
・無作為化二重盲検試験
が必要。だが、それがされてこなかった、されていても優位性を実証できる結果は殆ど得られていない。
もしデータが得られていたとしても信用に値するとは言い難い。
代替医療側の論理は、根拠や経験に基づく手法であり効果があるという人がいるから、という主張だが、
科学を装った詭弁と巧みなマーケティングによって創り上げられたものである。
一般市民はプラシボ効果でも良いじゃないかというかもしれないが、
正しい情報により、不当に高い値段で購入したり、正しい医療を受けるのが遅くなるリスクなどに警鐘を鳴らしたい。
ということだ(と理解した)が、繰り返しの論調に以下①~④の疑問がますます増幅。。。
①EBM=根拠が明確になっていないとしても、効果が実際に認められるのであればOK、か?
②科学的調査の結果=医療の効果、か?
③それでも利用する人の意思とは何か?(効果測定値を知ることが利用者減になるのか?)
④そもそも代替医療と代替でない医療とは、同じポジショニングなのだろうか?(だとしたら、なぜ同じ条件下で比較試験をした結果で議論しないのか?)
EBMアプローチは代替でなくても医療全体において必要なことという点はアグリーですが、
まだ最近の議論、発展途上でありましょう。
代替医療に限らず、臨床に導入する上で、第三者視立場からも有効性の実証を確立し
(最近も国内製薬会社におけるデータ改ざんがニュースになりました)維持し続ける
(治験でよくても市販後よろしくない結果になることもありますね)のは難しい。
またすべての疾患において通じるか、医療における人対人の部分の影響力は
切り捨てられるものでなく、「効果の実証」とは人為的なゆらぎ、時代や世相や価値観による
ゆらぎがついて回る部分もあり、実証結果は万能とは言い難い。
医療・医薬の専門でない方が、逆にそれを強みに、どのように切れ味や理屈の落としどころを
発揮されるかに期待したのですが、本書以前に見られた長所が発揮されるところがなく、
医療医薬における、ラディカルでかつフラットな深い洞察というのは難しいのだなということを、
改めて感じました。
04.30.2010
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